うつ病(気分障害)とは

抑うつが一日中続いて、睡眠が取れなくなったり、食欲がなくなったりします。あるいは逆に睡眠や食欲の量が増えたりもします。そして集中力がな くなったり、自分には価値がないと思ったり、自殺について考えたりすることもあります。
こうした抑うつ気分が長く続くと、うつ病というこ とになります。人によっては季節によって抑うつ気分が軽くなったり重くなったりする人もいます。
どれぐらいうつ病の人がいるかについて は、どこからどこまでをうつ病というのか難しいために、はっきりとはいえませんが、人口の3%~5%の人がうつ病だと考えられています。つまり100人いれば3人から5人はうつ病ということになります。

普通の憂うつとの違い

このように考えるとうつ病が治るというのは「憂うつな気分が無くなる」ことではありません。たとえ憂うつであっても「日常生活をする」ことができ、「憂うつになった背景を説明する」ことができ、「気分転換をする」ことができる、ということになると思います。
うつ病の治療には、まず薬による治療と認知行動療法が有効だといわれています。認知行動療法では、うつになりやすい考え方をチェックしていきます。人にはそれぞれ、自分では気づかないうちに自動的に頭に浮かびやすい、考え方の癖があると考えます。この考え方の癖に気づき、より現実的な考え方ができるようにしていきます。
薬による治療と認知行動療法によって、7割から8割の方が改善をするといわれています。しかしこれらの方法によっても改善しない、改善したけれど再発した、あるいは改善はしたけれどもまだうつ病が治っているように感じられない、という場合、別の方法を試していくことになります。

うつ病(気分障害)への治療法

憂うつは当然普通の人でも感じるものです。特に精神分析では、憂うつを感じることができるようになるためには、ある程度大人の性格になっていな ければならない、と考えられています。例えば子どもは大人が自分のためにあれこれしてくれることを当然のことと感じ、他の人に対して申し訳ない、と感じる ことはありません。これは他の人のことを自分とは別の人間とは認識していないためです。ところが成長してくるにしたがって他人を自分とは違う人格を持った 一人の人間であることを認識するようになります。そして今まで自分の取っていた振る舞いに対して申し訳なさを感じ、他人に対して思いやりを持つことが出来 るようになります。この申し訳なく思い、思いやりを持てるようになった時点で、人は憂うつを感じることができるようになる、というわけです。
ではうつ病と普通の憂うつとでは何が違うのでしょうか。これはとても難しい問題で、なかなか確かな区別をするのは難しいのです。一つ には程度の差があり、うつ病になると普通の抑うつ気分以上に気持ちが滅入り、苦しさも強まります。ただ、これでは客観的にはわからないので、もう少し客観的にわかるところをあげて見ます。
ずは日常生活が送れなくなることです。仕事に行ったり人と付き合ったりすることが出来なくなります。そして普通の憂うつな気分は、なぜ憂うつになっているのか本人にその理由や、そうなった背景が自覚できます。しかしうつ病になった人ではなぜ自分がここまで抑うつを感じなくてはいけな いのか、なんとなくきっかけはわかっていても、理由がはっきりとはわかりません。また、普通の憂うつを感じている人は、人と話したり趣味をしたりして気分転換をすることができます。ところがうつ病の人ではそうした気分転換をすることが逆に負担に感じられます。

参考文献
平井孝男 2004 うつ病の治療ポイント 創元社
Segal,H. 1964/1973 Introduction to the Work of Melanie Klein. Hogarth Press.
(岩崎徹也訳 1977 メラニークライン入門 岩崎学術出版社)

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